インプラント治療における同意書とは

インプラント治療の同意書とは

一般的な虫歯治療・歯周病治療と異なりインプラント治療の際には、歯科医院側から同意書が作成・提示されることがあります。同意書以外にもいくつか書類が取り交わされますので、安心して治療を受けるためにも、それら書類の内容について理解しておくことをお勧めします。

インプラント治療における同意書は承諾書とも呼ばれ、歯科医院側が提案・説明した治療内容にあなたが承諾し同意する旨をサインし、証拠として残しておくための書類です。ですから、同意書の内容をしっかり理解した上でサインしなければならないのは言うまでもありません。こういった同意書が、患者と医院間のトラブル回避のために重要な役割を果たしています。記載内容やフォーマットは歯科医院によって異なりますので、念入りな事前確認が必要です。

インプラント治療で同意書が必要になるケース

普通の虫歯治療・歯周病治療と同様に口頭の説明に同意さえ得られれば、同意書はなくても構わないのですが、口頭だけでは患者さんも十分理解し難いということも多く、後々、治療内容や金銭トラブルに発展することを防止するためにも同意書が必要になるケースが多い、というのが歯科医院としての見解です。

インプラント治療は全額自己負担となる自由診療です。保険が適用される治療は費用体系に決まりがありますが自由診療はそういった決まりがなく、歯科医院によって設定治療費には大きな隔たりがあるため、治療費を明確に理解してもらうためにも同意書が必要です。

場合によっては、口頭だけでインプラント治療の説明を終える歯科医師もいるでしょう。しかし、専門用語が頻出する内容を理解出来ないのは当然ですし、治療費について聞いたとしても忘れたり勘違いしてしまったりすることは珍しくないので、患者側も注意しなければなりません。

契約に関する書類がないということは、契約内容について証明出来ないということでもあり、例えば、歯科医師から説明されていた金額と請求書の額が異なるケースが起きたときも、患者側が強く出られなくなってしまうわけです。患者さんにとっても、同意書が用意されるかは留意しておくべきポイントなのです。

インプラント治療のカウンセリング

インプラント治療で使用される書類一覧

インプラント治療では大きく分けて、治療計画書、見積書、治療同意書(承諾書)などの書類が提示されます。それぞれどのような目的で使用される書類か、以下に説明いたします。

インプラント治療計画書

精密検査を行った後に作成される書類。内容に不明点があれば遠慮なく歯科医師に説明を求めましょう。インプラント治療に臨む際の不安を解消するべく、治療方法について理解したり相談する際にも役立ちます。以下に挙げる項目などが記載されています。

治療計画書の記載項目例
  • 現在の歯の状態
  • 治療予定部位
  • 抜歯の有無
  • 治療期間
  • 麻酔・鎮静の方法
  • インプラントの本数と種類
  • 費用
  • メインテナンス

インプラント治療見積書

治療計画をもとに治療にどれくらいの費用がかかるのかを計算した書類。「支払い方法」も掲載されていることが多く事前確認が必要です。治療過程では、歯周病治療や骨造成手術など追加の治療が必要になるなど方針変更の場合もありその際は、追加費用も発生します。初期見積書からの変更点を確認しましょう(治療内容が変わり大幅な費用増加が見込まれる場合は新たな見積書を作成してもらえます)。またインプラント治療では、再診料や抜歯代などがかかるので、インプラント1本あたりの相場だけで考えず、最終的な費用を理解しておく必要があります。

見積書の記載項目例
  • 精密検査料
  • 手術の費用(インプラント埋入手術・造骨手術・麻酔・鎮静・二次手術・粘膜形成手術)
  • アバットメント(インプラント体にのせる台座・支台)の費用
  • 仮歯の費用
  • 上部構造の費用
  • メインテナンスの費用

インプラント治療同意書(承諾書)

治療前、最初に検査や十分な説明が行われその内容に同意した場合に同意書にサインを求められます。十分な説明を受けたことや金額が予め記載されていますので、確認の上、相違なければサインをしましょう。重要な例として、治療中に容態が急変したというケースでは、その場で早急な判断のもと適切な治療が求められますが、同意書内でも、当該事態に備え適切な処置を受けることに承諾する、というような項目があるはずです。同意書にサインすることはそこに記載されていることを全て承諾したということ、リスク回避のためにも念入りな事前確認が必要です。

同意書の記載項目例
  • 治療方法
  • 治療期間や費用
  • 危険性や合併症について
  • インプラントと骨の生着が不調な場合の対応と費用
  • メインテナンスに関する項目

支払い方法についての書類

インプラント治療は高額なため、様々な支払い方法が用意されます。デンタルローンを利用する場合は手数料が発生しますので確認しましょう。本書類を治療計画書や見積書にまとめる歯科医院もあります。

支払い方法に関する記載項目例
  • 支払い方法
  • 支払い期日
  • 口座番号の案内
  • デンタルローンの申請書類

同意書の提示は当然、丁寧な説明をしてくれる医院を選ぶことが重要

安心してインプラント治療を受けるためには、十分な説明をしてくれる歯科医院を患者さん自身が見極めることが重要です。細かい説明を省略して、とかく治療を急ぐケースもなくはないようなので、そうではなく丁寧な説明を心掛けている歯科医院・歯科医師を探すことが大切だといえます。専門的かつ難しい言葉が使われることも多い治療ですので、説明の意味がわからなければ臆せず医師に質問してください。

また、治療内容や費用についてよく理解しないままサインをしてしまうと、大きなトラブルにつながってしまう可能性が高いです。インプラント治療の場合、年配の患者さんも多くなりますので、場合によってはご家族の立ち合いを考えた方が良いケースも多いようです。医師の説明責任の重要性はいうまでもありませんが、患者さんの側でも、同意書の内容をしっかり理解しようとすることを、どうぞ怠らないでください。


この記事は専門医師により監修されています
歯科医師村井健二のプロフィール

公益社団法人日本口腔インプラント学会 指導医・専門医・代議員・広報委員​
九州大学病院歯科医師臨床研修管理委員会委員・協力型施設施設長・指導医
公益社団法人日本補綴歯科学会 専門医
特定非営利活動法人近未来オステオインプラント学会指導医・監事
京セラインプラント公認インストラクター
高度総合歯科医療研究会 会長
臨床歯科インフォームドコンセント推進協議会 会長
一般社団法人京都府歯科医師会立京都歯科医療技術専門学校 元副学校長
公益社団法人日本口腔インプラント学会 第34回近畿北陸支部学術大会(平成27年開催) 実行委員長