インプラント治療におけるレントゲン検査について

インプラント治療におけるレントゲン検査について

インプラント治療を計画的かつ、より安全に進めるために、患者さんには事前に丁寧な検査を受けていただくことが重要となってきます。その際、活用されるのがレントゲンです。

本稿では、インプラント治療の過程で実施されるレントゲン検査について、その目的や、主たる検査方法を解説しています。レントゲン検査の内容について予備知識があれば、治療に臨む際の不安を抑えることにもつながるはずですので、どうぞ参考にしてください。

インプラント手術におけるレントゲン検査の目的

インプラント治療を行う際は必ず事前検査を行います。検査の第一歩となる口腔内撮影において、歯科用CTは3次元の検査となりますが、レントゲン検査では2次元の検査を行います。平面で撮影することにより、目視による口腔検査だけでは得られなかった情報を取得することが出来ます。

インプラント手術とは、欠損してしまった歯の顎の骨にインプラント体(人工歯根)を埋入し、そこに人工歯冠を取り付ける治療ですので、レントゲン検査によって、顎の骨がどの程度残っているのかを調べます。顎の骨の長さは個人差が大きく、通常のインプラント体では長過ぎるようなケースも珍しくありません。このようなケースでは、短いインプラント体を用意する必要があります。まずは、埋入するインプラント体の長さを判断するためにレントゲン検査が必要となります。

また前提として、インプラント治療は口腔内に生じている様々なトラブルを改善してから行うべきものですので、レントゲン検査によって、虫歯や歯周病がどの程度進行しているのか、骨が溶けていないか、といった情報に迫ることが出来ます。これらは目視だけではわからない情報であり、レントゲン検査が非常に重要な役割を果たします。

レントゲン検査の主な方法

レントゲン検査の撮影方法には、大きく分けると「パノラマX線 撮影」と「デンタル(口内法)X線 撮影」の2種類が存在します。それぞれの検査方法の特性は、次に述べる通りとなります。

パノラマX線 撮影

約15×30cmの1枚のフィルムに、必要な情報をまとめて撮影する方法です。顎の骨や歯だけではなく、歯列や鼻腔、上顎洞、顎関節部など、口腔内全体とその周辺の情報が収められています。パノラマX線撮影には「回転断層パノラマX線装置」を用います。

情報を1枚の平面画像で確認出来ることから、主に、歯の状態や歯の周囲にある組織の状態を全体的に把握する目的で使用される撮影方法です。ただし、撮影された画像は歪みをともなうこともあり、パノラマ画像だけで実際の位置や形を詳しく把握するのは難しいといえます。

デンタル(口内法)X線 撮影

デンタル(口内法)X線撮影は、パノラマX線撮影よりもかなり小さい、約3×4cmのフィルムを使った方法となります。全体ではなく、2~3本の歯とその周囲の組織の画像が収められています。歯科診療で最も用いられているX線撮影法です。

前述のパノラマX線撮影は全体像を捉えるのに適している分、細かい検査には向いていませんので、デンタル(口内法)X線の撮影において、詳細な検査を要する箇所を撮影していきます。パノラマX線撮影と同様、多少歪みをともなうことはあるものの、個々の歯の状態や周囲の組織がどのような状況なのか判断するのに適しています。とはいっても、やはり撮影された画像は二次元であり、デンタル(口内法)X線撮影だけでは、骨の厚みまで正確に把握するのは難しいのです。

インプラント治療後にもMRI検査を受けられる!?

話しはレントゲン検査から逸れるのですが、ここで、インプラントについて患者さんから受けることの多い、次のような質問をご紹介しておきましょう。

インプラントを入れるとMRI検査が出来なくなるって本当!?

MRI検査は主に癌の検査で使用されており、磁場を利用して内臓の画像を撮影します。磁場が強力な重力と電波によって発生するものということもあり、金属類を身に付けたままだとMRI撮影が出来ません。例えば、ペースメーカーや人工内耳といった金属製の医療機器を身体に埋め込んでいる方は、MRIを受けられないということになります。歯のインプラントについても金属が使われますので、MRI検査を受けられないのではないかと心配される方が多いのもよくわかります。

しかし結論から申しますと、一部例外はあるものの、ほとんどのインプラントでMRI検査に支障は生じないため、インプラント治療後でもMRI検査が可能です。MRI検査後に何らかの不調を来すような恐れも、ほぼないといって良いでしょう。これは、多くのインプラントに使われているチタンが、磁力を持たない金属だからなのです。心配であれば、インプラント治療を受ける前に、担当の歯科医師に確認してみてください。

レントゲン検査の結果が出たら

口腔内を調べるにあたっては、目視、レントゲン、歯科用CT検査と段階があります。いずれもインプラント治療を行う前に、口腔内の情報を得る目的で行われます。レントゲン検査でわかることが多いものの、十分な状況把握が難しいことがあるのも前述の通りです。データに不足があれば、他の検査も組み合わせて行われるのが一般的です。

またレントゲン検査の結果が出た場合は、歯科医師によってレントゲンの画像を元に説明がありますので、よく理解するよう努めてください。検査結果には、これから行われるインプラント治療の方針を左右する要件が含まれています。歯科医師の認識を自身でも共有しておくことが望ましいでしょう。医師の判断に疑問が生じるようであれば、率直に質問を投げかけ、納得の上で治療に臨むようしてください。


この記事は専門医師により監修されています
歯科医村井健二のプロフィール

公益社団法人日本口腔インプラント学会 指導医・専門医・代議員・広報委員​
九州大学病院歯科医師臨床研修管理委員会委員・協力型施設施設長・指導医
公益社団法人日本補綴歯科学会 専門医
特定非営利活動法人近未来オステオインプラント学会指導医・監事
京セラインプラント公認インストラクター
高度総合歯科医療研究会 会長
臨床歯科インフォームドコンセント推進協議会 会長
一般社団法人京都府歯科医師会立京都歯科医療技術専門学校 元副学校長
公益社団法人日本口腔インプラント学会 第34回近畿北陸支部学術大会(平成27年開催) 実行委員長