最奥歯に入れる延長ブリッジとは

最奥歯に入れる延長ブリッジとは

ブリッジは、失ってしまった歯を補う装置の1つです。欠損部の両端の歯を支えに橋をかけるように人工の歯を被せ、歯の働きを補う治療法なので、本来、ブリッジを入れるには支えとなるべき両隣の歯が必要になります。しかし、最奥歯を失ったときでも可能なブリッジの治療法として、延長ブリッジというものがあります。延長ブリッジの長所や短所はいったいどんなものでしょう。

延長ブリッジとは?

最奥歯を失ったときに行う治療法の一つとして、延長ブリッジがあります。通常のブリッジは、欠損部の両端を支えにして歯を補うのですが、最奥歯が欠損してしまった場合、片側にしか支える歯がありません。そこで、延長ブリッジでは多くの場合、最奥歯の隣とその隣、つまり前から数えて5番目と6番目、2本の歯を支えにして被せ物をします。

延長ブリッジは、自分の歯を支えにする治療法であるため、前提として、支えとなる歯が丈夫であることが治療のための条件になることはいうまでもありません。奥歯がないと噛みづらい、入れ歯やインプラント以外で治療したいという方に選ばれている方法です。

奥歯治療で延長ブリッジを採用する長所

  • ほぼ、歯と同じように噛める
  • 人前で取り外す必要がなく、歯磨きも出来る
  • インプラントより治療期間が短く、治療費を抑えられる
  • 外科手術をしないで済む

延長ブリッジは固定式なので、違和感も少なく、ほぼ自分の歯と同じ感覚で噛むことが出来ます。また入れ歯と異なり、人前などで取り外す必要がないことや、歯磨きなどのケアを自分の歯と同じように行えるのがメリットです。

一般的にはインプラントに比べて治療期間も短くなり、治療費を抑えることも出来ます。また、インプラントのように外科手術を必要としない点もメリットといえます。

延長ブリッジの短所

  • 噛む力が強くない
  • 他の歯を削らなければならない
  • 支える歯に負担がかかる
  • 顎の骨が痩せる可能性がある
  • 耐久性が高くない
  • 外れやすい

噛む力が強くない

延長ブリッジの噛む力は、天然歯の約6割程度といわれています。奥歯はそもそも、噛み合わせの中で最も強い力がかかる部位ですが、延長ブリッジでは、ブリッジそのものに大きな力を掛けないようするため、支える歯を削る場合が多く、結果的に噛む力が弱くなってしまいます。もちろんブリッジを入れれば、歯を失ったままよりはずっと噛みやすくなりますが、噛む力がそれほど強いわけではない点を留意しなければなりません。

他の歯を削らなければならない

一般的に、ブリッジを入れる際には隣の支えとなる歯を削る処置が行われます。延長ブリッジの場合は、前から数えて5番目と6番目を削らなければならない可能性が高くなります。仮にその歯が健康な状態であっても削ることが迫られますし、5番目と6番目の歯は、削られることで歯の構造が弱くなり虫歯や歯周病などになりやすくなる可能性が生じます。

支える歯に負担がかかる

通常のブリッジでも支える歯に負担はかかるのですが、延長ブリッジでは、さらに梃子(てこ)の力が加わり、ブリッジの支えとなる歯に大きな力がかかっています。そのため、ブリッジが外れたり、支えている歯の根がぐらついたりするなどの症状が起きやすくなります。

耐久性が高くない

ブリッジの平均寿命は7~8年といわれていて、特に保険治療で作られたブリッジは、経年劣化の影響を受けやすいとされています。ブリッジの平均寿命は、口腔内の状態や噛み合わせによって大きく変わりますが、奥歯は特に強い力がかかる部分なので日頃から負担が大きいほか歯磨きし辛い箇所でもあるため、延長ブリッジの場合、耐久性はさらに低くなるといえます。

延長ブリッジ以外の治療法

延長ブリッジは、前から数えて7番目、つまり最奥歯を失ったときに用いられる治療ですが、前述のような重大な欠点もはらんでいるため、多くの歯科医院では、最良の選択肢として推奨してはおりません。ならば、いちばん奥の歯における、延長ブリッジ以外の治療にどのようなものがあるか、検討してみます。

部分入れ歯

部分入れ歯は、健康な歯にバネを掛けて人工歯を設ける治療法です。ブリッジのように健康な歯を大きく削ることがないため、比較的取り組みやすい方法といえます。保険適用内の治療を選択すれば費用を抑えられるほか、他の治療法と比べ早く終わるのもメリットです。

しかし、慣れるまではバネの締め付け感や異物感が大きいと感じる方が多いほか、力を入れて噛むことが難しいため、噛み心地はあまり良くありません。また、取り外してブラッシングする手間があることや、寿命が短いこと、見た目が自然でないこともデメリットです。

インプラント

インプラントは、顎の骨に主にチタン製のネジを埋め込み上部に人工歯を冠したものを、顎に固定させる治療法です。骨とチタンはなじみが良くしっかり結合するため、歯の根が顎の骨に支えられるのと似た構造を再現することが出来ます。寿命としてもブリッジや入れ歯に比べて長く、高品質なものを長く使っていきたいという方にはおすすめです。

顎の骨にインプラント体を埋め込む外科手術が必要になりますし、費用はけして安くありませんが、まるで自分の歯のように違和感なく噛めることや、天然歯と同様にそれぞれが自立しているため他の歯や骨に負担が掛からないなど、ブリッジや入れ歯にないメリットがあります。

延長ブリッジには、外科手術しないで済むという気安さはありますが、メリットデメリット双方を良く理解し、医師と相談の上で奥歯の治療に臨んでください。


この記事は専門医師により監修されています
歯科医村井健二のプロフィール

公益社団法人日本口腔インプラント学会 指導医・専門医・代議員・広報委員​
九州大学病院歯科医師臨床研修管理委員会委員・協力型施設施設長・指導医
公益社団法人日本補綴歯科学会 専門医
特定非営利活動法人近未来オステオインプラント学会指導医・監事
京セラインプラント公認インストラクター
高度総合歯科医療研究会 会長
臨床歯科インフォームドコンセント推進協議会 会長
一般社団法人京都府歯科医師会立京都歯科医療技術専門学校 元副学校長
公益社団法人日本口腔インプラント学会 第34回近畿北陸支部学術大会(平成27年開催) 実行委員長