シリンダータイプのインプラントについて

シリンダータイプのインプラント

インプラントにもいろいろな種類がありますが、シリンダータイプという形状のインプラント体は、螺旋状の切り込みが入っていないので滑らかな円筒形をしています。本稿では、シリンダータイプインプラントがどういうものか、またそれ以外のインプラント体についても、形状、構造、素材、表面処理方法という側面から触れておきます。

現在のインプラント体の主流がどうなっているか、既に過去のものとなった淘汰の歴史も含めて示すことが出来ればと思います。インプラントの種類とそれぞれの特徴について理解することは、最適な治療の選択にもつながるはずですので、参考にしてください。

シリンダータイプインプラントの概要

シリンダータイプのインプラントは、一般的なインプラント体としてイメージされるネジ状の形をしていません。先端に螺旋状の切り込みが入っておらず滑らかな円筒形をしているので、上部と下部が同じ形状をしています。手術の際には、ハンマーのような器具で打ちながら顎の骨に埋め込むことが特徴となります。

比較的、骨に埋入することが容易なので手術の際の負担が抑えられます。またシリンダータイプは、手術を2回行う2回法に適しているタイプです。短所として、スクリュータイプと比較すると表面積が小さいため、顎の骨との結合が弱くなりやすいという点があり、現在は一部の症例のみに採用されています。

その他の形状のインプラント体の特徴

インプラント体の形状には、シリンダータイプ以外にスクリュータイプとバスケットタイプがあります。現在、圧倒的に多いのがスクリュータイプで、シリンダータイプとバスケットタイプについては、既に30年前にほぼ、なくなっているといっていいでしょう。その理由は後述してまいります。

スクリュータイプ

スクリュータイプは、先端がネジのような螺旋状の切り込みを持つインプラント体で、回転させながら顎の骨に埋め込まれます。螺旋状になっているので骨と接する面積が大きく、埋め込んで固定されやすいのが特徴です。骨に埋め込む際の穴も小さくて済むので身体への負担を軽減出来るほか、噛む力を効率的に歯に伝えられるというメリットがあります。スクリュータイプは現在の歯科用インプラントの主流で、特別な理由がない限りスクリュータイプが選択されています。

バスケットタイプ

バスケットタイプも、スクリュータイプと同じ螺旋状なのですが中や側面に穴が空いています。空洞があることでインプラントの中まで骨が入り込めるのが特徴ですが、その分、強度が弱く破損するトラブルも起こっています。高度な技術が必要なため、現在はほとんど使用されていないインプラント体です。

形状以外の違い

インプラントは、形状以外にも構造、素材、表面の処理の方法において種類があり差異が生じます。

構造

インプラントの構造のタイプ
  • ワンピースタイプ
  • ツーピースタイプ

ワンピースタイプは、人工歯根であるインプラント体とアバットメントが一体化している構造です。手術が1回で済むため、身体への負担を最小限に抑えられます。ツーピースタイプより費用を安く抑えられる長所がある一方、顎の骨が良い状態でないと使用出来ず適応症が限られるという短所もあります。また、アバットメントが故障したときはインプラント体ごと撤去する必要が生じます。

ツーピースタイプは、インプラント体とアバットメントが分かれているインプラントです。2回の手術が必要にはなるものの幅広い症例に適用出来ることや、アバットメントが壊れてもインプラント体は残せるなど長所も多くあります。現在はツーピースタイプがインプラント構造の主流となっています。

素材

インプラントに使われる素材
  • 純チタン・チタン合金
  • チタン・ニッケル合金

純チタン・チタン合金は、強度があり長持ちしやすく骨とも結合しやすいのが特徴です。インプラント治療で多く用いられています。

チタン・ニッケル合金は、形状を任意に成形しやすく形を保ちやすいという特徴がありますが、骨への結合性に関しては純チタン・チタン合金に劣るとされており、こうした形状記憶合金は約20年前に姿を消しています。

表面処理

インプラントの表面処理の方法
  • 機械研磨処理
  • ブラスト処理
  • 陽極酸化処理
  • 酸処理

機械研磨処理は、専用機械を使って人工歯根の表面を滑らかにする処理です。人工歯根に不要な凹凸があると骨に悪影響を及ぼす可能性があると考えられたため、事前に研磨し滑らかにすることをしていたこともありました。

ブラスト処理は、人工歯根の酸化膜を除去して表面を細かく粗くする加工です。酸化膜を消失させることで骨との結合力を上げる方法です。

酸処理は、硫酸や塩酸などの強酸を使用し人工歯根の表面に粗い凹凸を作る処理です。ブラスト処理同様、表面に凹凸を作ることで、チタンと骨の結合度合いを向上させます。

現在は、ブラスト処理、陽極酸化処理、酸処理などを組み合わせた、骨との親和性の高い表面処理が一般的であり主流です。

インプラントの種類と長所短所を知ることが重要

上述の通り、シリンダータイプインプラントはその形状により骨に埋入するのが容易である反面、スクリュータイプインプラントと比較し表面積が小さく初期の固定が弱くなるという致命的なデメリットがあります。既に30年前には姿を消し、現在では、ほんの一部の歯科医院でしか採用されていないことの理由です。

インプラントの形状はこのシリンダータイプの他、主流のスクリュータイプ、やはり現在は殆ど使用されていないバスケットタイプがあります。さらに、その形状だけでなく、構造や素材、表面処理にも種類があります。それぞれの特徴を知った上で、総合的な見地からインプラントを選びましょう。


この記事は専門医師により監修されています
歯科医師村井健二のプロフィール

公益社団法人日本口腔インプラント学会 指導医・専門医・代議員・広報委員​
九州大学病院歯科医師臨床研修管理委員会委員・協力型施設施設長・指導医
公益社団法人日本補綴歯科学会 専門医
特定非営利活動法人近未来オステオインプラント学会指導医・監事
京セラインプラント公認インストラクター
高度総合歯科医療研究会 会長
臨床歯科インフォームドコンセント推進協議会 会長
一般社団法人京都府歯科医師会立京都歯科医療技術専門学校 元副学校長
公益社団法人日本口腔インプラント学会 第34回近畿北陸支部学術大会(平成27年開催) 実行委員長