インプラントにも歯石が付着するのか?

インプラントにも歯石が付着するのか

インプラントは人工の歯ですが、毎日の歯磨きをおろそかにすると歯石は付着してしまいます。また、歯石を放置しておくと歯肉が炎症を起こす可能性があるため、インプラントの歯石ケアは欠かせません。インプラントに歯石が付く原因、その歯石が引き起こす問題は何か……インプラントを長持ちさせるために参考にしてください。

インプラントに歯石が付着する理由

インプラントは人工の歯なので虫歯にはなりません。しかし、インプラントにも歯垢や歯石は付着します。歯垢は、口腔内の細菌と、細菌が食べカスをエサとして代謝した物質から成り立っていますが、歯石は、その歯垢が石灰化したものでわずか数日で、歯垢から歯石になるといわれています。

歯垢が付着しやすいのは歯のザラザラした部分です。インプラント上部構造にあたる人工歯の多くには、セラミックが使われています。セラミックは耐久性が高い素材ですが、長期間に渡って使用するうちに表面にザラザラとした細かい傷が出来てしまい、そうした傷やインプラントと歯茎の間(インプラント周囲ポケット)に歯垢が付着しがちです。

インプラントに歯石が付着してしまったときは、歯科医院で機械的に取り除く治療が必要です。歯石除去には、スケーラーという先の尖った金属の器具を使いますが、スケーラーを使用するときインプラントに小さな傷を付けてしまう可能性があります。歯石除去で生じた小さな傷にまた歯垢が入り込みやすくなり、再び歯垢や歯石が付着しやすい状態になってしまいます。こうした悪循環を引き起こさないためにも、日頃から歯垢を残さないケアが大切なのです。

インプラントの歯石が引き起こす問題

インプラントに歯垢や歯石を付着したままにすると、次のような問題が生じる可能性があります。最悪の場合には、インプラント周囲の骨が溶けてしまってインプラントが抜け落ちてしまい、その再手術すら難しいケースもあるので、初期段階で治療することが重要です。

インプラント周囲炎になる

歯石を放置したままにしていると「インプラント周囲炎」になる可能性があります。インプラントには神経が通っていないので、炎症が進んでいても痛みに気が付きにくく、気が付いたときには既に重症化しているケースも少なくない症状です。

インプラント周囲炎とは

インプラントや歯茎、歯槽骨など周辺の組織が、細菌による炎症を起こす病気のこと。インプラントの歯周病とも呼ばれ、インプラント周囲炎が進行すると歯周病同様、歯肉からの出血や膿などがみられます。膿がみられだすとインプラントを支えている骨が溶けだし吸収していきます。

口臭の原因になる

歯垢の正体である細菌とその代謝物はガスを発生させます。そのガスは硫化化合物と呼ばれ、不快な悪臭がします。歯周病や虫歯でも同じような口臭が発生します。

インプラントが抜け落ちる可能性が生まれる

前述のインプラント周囲炎は、炎症や痛みをともなうだけでは済みません。悪化すると骨を溶かすこともあります。インプラントを支えている骨が溶ければインプラントを支えられなくなり、最悪の場合、インプラントが抜け落ちてしまいます。

再治療が難しくなる

インプラント周辺の歯槽骨がインプラント周囲炎によって溶けてしまうと、インプラント埋入が難しくなり、再治療自体が困難になってしまいます。また、噛み合わせが悪くなったり、箇所によっては顔の見た目も変わったりします。

インプラント周囲炎は自分では治せません

膿が止まらないようなインプラント周囲炎は、歯科医院で処置してもらわない限り良くなりません。悪くなる一方ですので早めに診てもらいましょう。

インプラントの歯石予防

インプラントに歯石が付着しても自分では適切に除去することが難しいため、歯石が付かないようにケアを行うことが大切です。これについては天然歯の歯石予防以上に注意を払う必要があります。

インプラントの歯石予防

毎日の丁寧で正しい歯磨き

インプラントの歯石対策は、歯磨きの仕方に関わってきます。やはり、日々の歯磨きを丁寧に正しく行うことが重要なのです。歯石になる前、歯垢の段階ならば歯磨きで取り除けるので、丁寧なブラッシングを心掛け、歯垢が溜まらないよう注意しましょう。

インプラントの歯磨きの方法も、天然の歯と基本的に大きく変わりません。特に歯垢が溜まりやすい歯と歯茎のポケットは、歯茎を傷つけない程度の力加減で丁寧に磨いてください。また、歯ブラシが届きにくい場所や歯と歯の間などは、歯間ブラシやデンタルフロスなどを使ってケアすると歯垢を除去しやすくなります。ご家庭で出来るプラークチェックとして、歯垢染色液を使用することもお勧めです。

人によって歯の特性は様々です。自分に合った正しい歯磨きを知りたいという方は、通院している歯科医院で相談してください。特にインプラント埋入後は、歯磨き粉などの歯磨剤選びもインプラントの素材を考慮して選ぶ必要があります。

定期的なメインテナンス

インプラントに歯垢を溜めないようにするため、毎日の歯磨きが重要なのは言うまでもありません。ただし日々の歯磨きだけでは、全ての汚れや細菌を取り除くことは不可能に近いのです。またインプラントに溜まった歯垢が歯石化してしまった場合は、インプラントを傷つけないよう歯科医院でも慎重に取り除く必要があります。定期的に歯科医院に通い、自分の目では見えにくい歯垢や歯石をクリーニングしてもらいましょう。


この記事は専門医師により監修されています
歯科医師村井健二のプロフィール

公益社団法人日本口腔インプラント学会 指導医・専門医・代議員・広報委員​
九州大学病院歯科医師臨床研修管理委員会委員・協力型施設施設長・指導医
公益社団法人日本補綴歯科学会 専門医
特定非営利活動法人近未来オステオインプラント学会指導医・監事
京セラインプラント公認インストラクター
高度総合歯科医療研究会 会長
臨床歯科インフォームドコンセント推進協議会 会長
一般社団法人京都府歯科医師会立京都歯科医療技術専門学校 元副学校長
公益社団法人日本口腔インプラント学会 第34回近畿北陸支部学術大会(平成27年開催) 実行委員長