ノート#11:インプラントの治癒期間からメインテナンス

歯科ノート著者村井健二

インプラント治療は、「入れて終わり」ではありません。むしろ手術が終わったその後が、治療の本当のスタートです。

インプラントも、ご自身の歯と同じように日々のお手入れと定期的なケアが不可欠です。歯科医院におけるメインテナンスでは、インプラントをできるだけ長く快適に使用いただけるようサポートします。

インプラント治療の最終回では、インプラント治療後の流れと、長期的に安定して使い続けるためのポイントについてお伝えします。

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治癒期間

インプラントを埋入した後、いったん粘膜は元に戻して、骨とインプラントがしっかり結合するまで時間をおきます。その期間を「治癒期間」と呼びます。

上顎:およそ6ヶ月
下顎:およそ3ヶ月

これは骨折の治癒期間と同じように考えるとイメージしやすいですのですが、固い骨は短く、やわらかい骨は時間がかかるそのようにご理解ください。治癒期間のゴールデンスタンダードは上顎は6ヶ月、下顎なら3か月ですが、近年では、超音波機器(BRソニックなど)を用いて治癒期間を短縮する取り組みも進んでおり、症例によっては治癒期間が2ヶ月ほどで完了する場合もあります。また、ケースバイケースですが、総義歯の方の場合などは、イミディエイトローディングといってその日のうちに仮歯を入れて噛めるようにする場合もあります。

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インプラント二次手術 歯肉に窓を作ります

二次手術は、インプラント上部の頭だしの工程です。治癒期間を経て、骨としっかり結合したインプラントは、粘膜の中に埋まった状態です。この状態から、インプラントの上部を出して「土台(アバットメント)」を取り付ける処置を「二次手術」と呼びます。

小さな切開をして窓を作り、粘膜からインプラントを出し、部品を取り付けます。そこから歯ぐきの治りを待つ期間が約2週間程度です。歯肉が整ったら、次に仮歯を装着していくステップへ進みます。

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テンポラリークラウン・ブリッジ・義歯・仮歯

上部構造物作製する工程です。仮歯(テンポラリークラウン)には、次のような目的があります。

・ほっぺたや舌を噛むのを防ぐ
・発音やかみ合わせのリハビリ
・最終的な人工歯を作るためのテスト(見た目・機能の確認)

症例によっては仮歯をスキップすることもありますが、お口の環境を整える重要な調整期間として活用するケースが多いです。 

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印象と咬合採得

最終的な上部構造を作製するために、印象採得によって歯の形や周囲の歯肉組織などを正確に記録し、上部構造物を作るための基礎データを記録します。同時に咬合採得で上下の歯がどのように噛み合うかを記録し、インプラント上部構造物が正しく機能するように、噛み合わせの位置や状態を把握します。

かたどりの後はいよいよ最終的な人工歯(クラウン)を作っていきます。
セラミック製(当院の場合8割の方):自然な見た目を重視したい方におすすめ(特に前歯など)
金属製(当院の場合2割の方):見えにくい奥歯では強度や調整のしやすさを重視して選ぶ方もいらっしゃいます。

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上部構造装着・調整

採得の後は、技工所での方で模型を起こして、人工歯を作成します。完成後、今度は歯科医院の中で微調整しながらつけていくという流れです。完成した人工歯をねじで留めたり、あるいはセメントで止めたりすることによって自分の歯と同じように噛めるようにしていきます。見た目も自然な歯とできるだけ変わらないように作っていくということが基本になります。

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メインテナンス

ここまでが、ものを作るという流れになりますが、ここからが非常に大切なことになります。治療後は、アフターケアとして正しいブラッシングを行うとともに、少なくとも半年に1回は定期健診とプロフェッショナルケアを受けてください。
・3~4ヶ月毎に行うことをおすすめします
・歯科衛生士によるチェック&プロフェッショナルクリーニング(残存歯とインプラント周囲の検査と歯垢・歯石除去)
・Drによる残存歯の虫歯チェック・歯周病チェック・根尖病巣チェック・咬合チェック
・インプラント周囲骨のチェック(目に見えない小さな異変にも気づけるよう、デジタルレントゲンで拡大して確認することで、精密なチェックが可能です。)
・噛み合わせのバランスチェック
※約1時間のプログラムです。

治療が済んでからが本当のお付き合い メインテナンスとセルフケア

メインテナンスは、要するに維持していくということのためにやっていくわけですが、治療が済んで、インプラントが人工臓器としてしっかりと機能していくために患者さんご自身がしっかりとケアしていくこと、それが本当の始まりだと言っても過言ではありません。定期的な通院だけではなくご自宅でのケアもしっかりやっていただくことをお願いしています。

道具は、歯ブラシ、歯間ブラシ、ワンタフトブラシ、デンタルフロス、スーパーフロス、などいろいろなものがありますが、こういったものも治療道具の範疇だという風にお考えいただきたいと思います。当医院ではこれを処方という言葉を使って患者さんにお出ししております。それぐらい重要なものです。

そこらに売ってあるようなものではなく、やはり患者さんにとってベストなものをお選びして、それを使っていただくことが大切です。もちろん使い心地もだいぶ違います。

当医院では、患者さんの状態に最適なケア用品を歯科衛生士が選んでご案内していますが、実際の使用状況を確認するため、お使いのブラシを持参しての来院も歓迎です。

インプラントを長く快適に使い続けるために行うのがメインテナンスですので、人工歯根であるインプラントをきちんと機能させ続けるためには、定期的な通院に加え、毎日のセルフケアの積み重ねが欠かせません。要するに治療が済んでからが歯科医院と患者さんの本当のお付き合いだと考えています。